郁楓庵−お茶(4)

(2000.03.11 一部改訂)


これは我々業界の裏話ですが、ペットボトルや缶の緑茶は下級のお茶を使っています。
原価は限りなくゼロに近いものです。極端に言えば、コスト的には防腐保存の為の添加物(本来のお茶は極端に酸化しやすいものですからね)と缶代と輸送費くらいなもんです。
ですから、のどの渇きを癒すためには良いかも知れませんが、私はあれをおいしいお茶だとは絶対に認めません。
たとえば、「玉露入り緑茶」などという、響きがいかにも良いお茶を使っていそうなものもありますが、「リンゴ入りアップルジュース」あるいは「ミルク入り牛乳」と言っているのと同じで、全くナンセンスなコピーであるネーミングだと言わざるを得ません。

本当においしい、本物のお茶はやはり手間ヒマをかけて、きちんと急須を使っていれなければ飲めないのです。

では、あなたは、おいしい日本茶をいれる自信がありますか? 高価なお茶を使えば、美味しいお茶をいれられるなんて思っていませんか?

確かに高いお茶は、安いお茶よりはるかに美味しく出せるのは間違いありません。 でも、いい加減にいれたのでは、そのお茶の持っているおいしさの半分も引き出せません。

では、どうすればいいのでしょうか。 このページではそんな疑問にお答えします。 ここに書いてある、重要でありながら、しかも簡単な秘訣さえ守って頂ければ、いまあなたが飲んでいる日本茶でさえ格段に味が良くなるはずです。

ポイントは三つあります。
一つ目は茶葉の量、二つ目はお湯の温度、三つ目は浸出時間(お湯を注いでからの時間)、以上の3点です。 この三つが最もよく調和されたとき、はじめてそのお茶の持つ絶妙の味を実現することが出来るのです。

お茶のおいしさの一番の要素は甘味成分のアミノ酸です。 しかし、この味だけでは、お茶として全然美味しくありません。 言ってみれば「味の素」を舐めているようなものです。

実は、ごくわずかですが、人工的にこのアミノ酸を味付けしているものもあります。 それが一概に悪ということではありませんが、私個人としては、そういったお茶は邪道だと思っています。 お茶は、お茶が本来持っている味で勝負すべきです。
これを見分けるには飲んでみるしかありませんが、異常に、甘みやうまみがあって、鮮やかすぎるほどの緑色をしていたら、加工してあるお茶である可能性は否定できません。 

では、お茶の本来のおいしい味とはどういう味なのでしょうか。

前述の通り、うまみのアミノ酸だけではおいしいお茶にはなりません。 それに加えて、苦みのカフェインや、渋みのタンニンといった種々の味がバランス良くまじり、渾然一体となったものが一番美味しいのです。
実はこれらの成分はお湯に溶け出すのにちょうど良いそれぞれの温度があります。例えば、アミノ酸は60度、カフェインやタンニンは80度で一番よく溶け出します。これらをバランスよく抽出するために、先に書いた三つのポイントが重要になってくるのです。
そして、これらの含有量は茶葉の種類によってかなりの違いが見られます。(下表を参照してください)

茶葉100g中の成分
種類カフェインタンニンアミノ酸類遊離糖灰分ビタミンC
玉露3.3g12.5g4.6g2.1g6.3g150mg
上煎茶3.0g14.5g2.9g2.7g5.4g400mg
並煎茶2.4g13.5g1.4g4.4g5.2g250mg
番茶2.0g11.5g1.0g4.0g4.8g130mg



本当に美味しいお茶を出すには、これらのお茶の種類によって、茶葉の量、お湯の温度、浸出時間の三つのポイントを使い分けることが大事なことなのです。

さて、その他にも気を配るものがあります。 それは水です。 水は必ず一度沸騰させてからお使い下さい。 ミネラルウオーターでも硬水のものは避けて下さい。 水道水の場合、カルキ臭を取るためしばらく沸騰させる、とよく言われますが、長時間沸騰させるのも良くありませんので、気をつけて下さい。

もう一つ大事なことは、自分の好みにあったお茶を知ることと、そのお茶の種類にあわせたお茶の入れ方を知ることです。

下の表を参照しながら、一度、面倒くさがらずに、じっくりと時間をかけてお茶をいれて見ませんか? きっと、あなたのいれたお茶に、皆さんが驚嘆の声を上げること、請け合いです。

お湯の温度は、湯冷ましというものを使って調節します。お湯を入れて冷めるのを待つ入れ物です。 これは特に無くても普通の湯飲み茶碗で代用できます。目で見た目安は50℃で湯気がかすかに上がっている状態です。70℃で湯気が横揺れしながら高く上がっている状態。 90℃で勢いよく上がります。 ただしこれはあくまでも室温(20℃前後)での状態。
良いお茶であればあるほど、湯冷ましや、お湯を入れてから待つ時間など手間ヒマが必要になります。おいしいお菓子などを食べながらゆったりとした時間をお過ごし下さい。

急須から茶碗に注ぐときは1服ごとに各茶碗に均等に注ぎましょう。 それも1往復するようにです。 これは茶碗毎の味の偏りをなくすためには重要なことです。 また、最後の一滴、これが味を決めると言っても過言ではありません。 最後の一滴まで注ぐことが大事です。    



美味しいお茶を入れるための標準表

<農水省茶業試験場/お茶の入れ方研究会資料>

種類茶の量湯の温度湯の量浸出時間
玉露10g/3人分50℃60ml150秒
上煎茶10g/3人分70℃180ml120秒
並煎茶10g/5人分90℃450ml60秒
番茶15g/5人分熱湯650ml30秒
ほうじ茶、玄米茶は番茶と同じように入れます。


<お茶の話・余談>

テレビドラマを見ているときに、茶の間でお茶をのんでいるシーンが出てきたら、いまここに書いてある美味しいお茶の入れ方と比べてみて下さい。 ほとんどのドラマではいい加減な演出です。ひどいものになると、いつお湯を入れたか分からない急須からそのままお茶を注いで平気な顔をして飲んでいるシーンなんかもあります。 きちんと湯ざましして、最後の一滴まで注いでいるシーンも見たことがありません。
そのドラマの脚本家や監督が如何に評判のいい人でも、意外なところからその人の教養がわかります。

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