茶の湯閑話


2:炉の話

 茶の湯は東山風の書院台子から発展をしてましたが、その茶には炉の点前はありませんでした。 草庵の茶を編み出した村田珠光が四畳半に初めて炉を切って及台子を置き合わせた点前を行ったのがその最初といわれています。

 利休以前の炉は、大きさの統一はなく比較的大きい炉(いわゆる囲炉裏)を使っていましたが、利休が一尺四寸の炉を初めて使い、大きさを統一しました。 また、炉の深さはだいたい一尺三寸から一尺くらいとされています。 五徳を据える高さは、釜の大きさによって若干上下します。 炉縁の大きさは一尺四寸四方、炉縁自体の幅が一寸五分、そのうち内側の面取り部分が三分。高さは二寸二分。これが炉縁の寸法の決まりです。

 本式の炉は最近は余り見なくなってきました。なにせお金がかかりますからね。 とりあえず、作り方だけを簡単に紹介しておきます。まず檜(ひのき)で、四方が一尺四寸強、深さ一尺八寸ほどの箱を作り、その内部を蔦を細かく砕いたものを混ぜた土で塗りあげます。深さの上半分は和紙を張って更に上塗りします。
これにより、上部より下部の方が内部の空間がほんの少し広くなるのですが、これは炭をついだ場合、炉の中で対流をおこし、炭の火付きをよくするためといわれています。壁は出来上がり二寸二分半の厚さになるように仕上げます。内寸で九寸五分四方、深さが約一尺五寸で、これを炉壇(ろだん)と呼びます。
 これに炉縁をはめて上から見ると、炉壇が約五分ほどはみだして見えるのが決まりとなっています。正式にはこの炉壇は毎年炉開きの前に塗り替える事になっています。

 これが、正式な炉壇ですが、作るのにかなりの技術を要するし、それなりのお金も掛かります。それに手入れの手間もばかになりません。そのため、現在は銅板でできた手軽な炉壇が多くなってきています。他にも、陶器製や鉄製の炉壇もあります。

 さて、家を新築したり、増改築をしたりする際に、ついでに炉を切ろうという人は結構いらっしゃいます。 計画当初からそういう目的で設計してあるのならば問題も少なくてすむのですが、途中から、思いつきで作る場合は、なかなか炉を切る場所が決まらないという問題が持ち上がります。 実は炉の切り方一つで茶室の雰囲気も変わってしまいますし、使い勝手も変わってしまいますから、炉を切るということはとても重要なことなのです。 炉は決して思いつきで切るものではありません。

蛇足ですが、きちんとした茶室を作るのであれば、茶室を作った経験が豊富な設計士や大工さんにたのむことです。実は、茶室の決まりには、設計士や大工たちが嫌う決まりが少なからずあります。(例えば畳の敷き方など←これでまず炉の切り方が頓挫してしまう場合が多い)
何も知らない業者に任せていると、結局はこういう決まりを無視されて悲惨な結果になる事がままあります。うちのお客様でも時々そういう人を見かけます。 また、なまじ知ったかぶりをして施工主の言う事を聞こうともしない業者も危険です。 高いお金を出して、出来上がってから泣きを見ても取り返しがつかないですから、業者選びには十分気をつけていただきたいものです。

要は自分の作りたい茶室のイメージや仕様をしっかりと持つことです。

では、炉の切り方の種類を少し説明しましょう。

 炉の切り方には八通りの種類あります。これを八炉の法と呼んでいます。その種類は、四畳半切、台目切、向切、隅炉のそれぞれ本勝手切りと逆勝手切りです。
ただし、逆勝手切りは非常に特殊なもので、よほどの手慣れた数寄者でなければ使いこなせません。これは当然お点前も逆勝手になるのですから、言うならば、右利きの人が左手で箸を使うようなもので、初めて炉を切る方にはとてもお薦めできません。もっと踏み込んで言えば、「絶対に切ってはいけない」と言い切っても良いくらいです。ところが、茶室を知らない設計士や大工は平気で逆勝手の炉を切ってしまう場合があります。茶室本来の機能性ではなく見た目でデザインしてしまうからでしょうね。
無知とはこのように恐ろしいものなのです

 四畳半切は広間切ともいわれ、いちばん一般的な切り方です。 お点前の畳が丸畳(一畳そっくりそのまま)あって、炉の位置は畳の長辺を二等分した位置から下座側に切られます。これに対して、台目切、向切、隅炉は小間の炉の切り方になります。(後述) また、四畳半切(広間切)、台目切、はお点前をする畳の外に炉が切ってあるから出炉(でろ)と呼び、向切、隅炉は点前畳に炉を切ってありますから入炉(いりろ)という区別の仕方もあります。

四畳半切り   
a:四畳半切(本勝手) 

b:四畳半切(逆勝手) 

広間切
  広間切は四畳半切が基準で
畳が増えて行くだけ。

 台目切というのは、お点前の畳が台目畳になっているものです。
台目畳というは丸畳から台子の幅一尺四寸と屏風の厚さ一寸の計一尺五寸だけ寸詰まりになっている畳のことです。 京間の畳は六尺三寸ですから、ここから一尺五寸除いた四尺八寸が台目畳の寸法になります。すなわち炉はお点前の畳からみて、四畳半切の位置で切られていながら、点前畳の先の方が、台子と風炉先の分だけ切りとられていると考えてもらえばよいでしょう。

       台目畳は丸畳みから一尺五寸切り取った大きさ。ただし炉の位置は
       四畳半切と同じ所である。この切り取った部分をお尻に回して再び
       丸畳みの大きさにすると、上げ台目切りとなる。        

また、台目切の茶室を呼ぶ場合、三畳台目とか二畳台目とか呼んでいますが、これは三畳+台目畳、あるいは二畳+台目畳という意味です。
ところで、茶室によっては、ちょうど切りとった分を点前畳の下座側にくっつけたようにして丸畳になっているものもあります。これは、上げ台目切と呼んでいます。

次に、向切はお点前の畳の右手向うへ炉を切ってあるものです(当然、逆勝手なら左側です)。 隅炉はその逆に左手向こうです(逆勝手は逆)。この場合小板と言うものを用いるのが決まりで、長さは一尺四寸、幅が二寸の板です。これは、お点前には直接関係はありません。実は炉壇を出し入れするときの事を考えてこういう仕様になったのだそうです。
また、当然、台目畳への向切や隅炉もあります。 加えて、その台目畳の先へ、切りとった分と同じ大きさの板を敷く事もあります。これを向板(むこういた)と呼びます。この場合の小板の幅は、一寸八分になります。

      
向切と隅炉の本勝手の切り方

向切と隅炉の逆勝手の切り方


さて、実際の切り方は、切ろうとする部屋の実状(床位置や水屋の位置などの作り)に左右される場合もありますので、この場では具体的なお話は出来ませんが、前にも申し上げた通り、炉の切り方一つで部屋の雰囲気や機能性がガラリと変わるので、先生や知識のある方に良く相談をしながら実施するのが一番間違いのない方法だと思います。


郁楓庵連絡帳 ご感想、ご連絡はこちらへ

Copyright (c) ikufu ikeda