茶の湯閑話


3:寸法の話


 お茶の世界には昔から伝わるいろんな約束ごとがたくさん存在します。たとえばお点前法や客の作法などがそうです。それが400年以上に渡って、その通り寸分違わず継承されてきた事は素晴らしい事だと言えるでしょう。

そしてそれは作法に限らず、寸法の分野にも言えることであり、実際いろんな道具、そして茶室の造りに昔から決まった寸法があるのです。

この章ではそれについてすこし触れてみたいと思います。

まず、畳の寸法。これは京間畳が基準で、その寸法は六尺三寸×三尺一寸五分です。 江戸間の畳は、これよりも小さくなります。この違いは建築方法(柱の位置)によるのです。例えば、四畳半の部屋を例に取ると、京間は、畳の大きさが決まっていて、柱の位置を決める場合、九尺四寸五分四方のスペースの外側に柱が来る建築方法になります。
ところが、一般に江戸間と呼ばれる建築方法(現在の一般的建築方法)では、最初から四畳半を一間半(九尺)四方として、柱の芯から芯までの間隔を九尺とって、まず最初に柱の位置を決めてしまうのです。その後、その中のスペースに原寸合わせの大きさの畳を敷き合わせることになります。ですから江戸間の場合は柱の太さによって少しづつ畳の大きさも変わってくるのです。

 通常の一般建築では三寸五分が一般的な柱の太さですが、茶室の場合はもう少し華奢な柱を使う場合が多いようです。ただし、決まった太さはありません。 ここでは計算しやすいように柱の太さを三寸角として考えてみましょう。
すると、両側でそれぞれ柱の太さの半分、一寸五分削られます。両側ですから結局、倍の三寸も小さくなる。ということは八尺七寸四方が四畳半のスペースということになります。これで計算をすると、一畳の大きさは五尺八寸×二尺九寸となってしまいます。京間畳みと比べると実に長辺で五寸短辺で二寸五分も小さくなってしまうのですね。
これにくわえて、今は団地サイズといってまるっきりでたらめな寸法の畳までまかり通っています。もし貴方が、部屋を探しておられるなら、物件の資料に何畳と書いてあろうと、現物を確かめない限りは納得してはいけませんよ。

 ところで台子は京間畳の寸法を基準に作られているので、その幅は三尺という決まりになっています。これは三尺一寸五分幅の京間畳で使うと、実にしっくりとぴったりと合うのです。ところが、これを先ほどの計算の江戸間の畳で使うと一寸ほどはみ出してしまう事になります。実際のお点前では壁側に火箸をおく場所が必要ですから少なくとも二寸ほどははみ出してしまう事になります。

あなたがお稽古しているところでは台子ははみ出していませんか?
良い事なのか悪い事なのかわかりませんが、最近は江戸間用の寸法の台子も出てきています。私の店でも何点か扱いました。 売っていながらこう申し上げるのはなんなんですが、本末転倒という気がするのは私の思い過ごしでしょうか。

台子の話が出たので、ついでに書きますと、台子(真台子)の寸法は、地板幅が三尺、奥行きが一尺四寸二分、厚さ一寸四分、天板幅が三尺二分、奥行き一尺四分、厚さが六分。高さが二尺二寸で柱は八分角という決まりになっています。これが基本となって、あなたがお点前で使っているいろんな棚は、この寸法から順次創出されていったものなのです。

 お稽古で何気なく使っている炉は一尺四寸四方と決まっています。これは利休が初めて試みて、その後、統一した寸法ですが、実は、上記の台子の奥行き寸法と同じなのです。
 また、風炉先の寸法ですが、、正式(利休形)なものは、高さが二尺四寸、幅は三尺一寸、厚みが五分です。この高さと幅も、台子の高さを基準にして割り出されています。 ところが、この風炉先も台子同様、江戸間サイズが出ています。(宗旦好の寸法は、高さを一尺八寸に抑えている)

 話は変わって、薄板には三種類あります。矢筈板、蛤端、丸香台。矢筈板は古銅や青磁、染付など真の花入用、蛤端は国焼の中でも釉薬のかけてある行の花入に使います。丸香台は釉薬のないものや楽焼、竹などの草の花入に用います。
矢筈板の寸法は一尺四寸三分×九寸三分五厘で厚さが二分五厘です。 矢筈の広い方を上にして使うのが約束。
蛤端は一尺三寸四分×九寸五分五厘、厚さが二分五厘。 丸香台は直径一尺五分と一尺の2種類あって、厚さは三分五厘です。

小物類道具の寸法を少し。

まず、茶杓。中節(草の)茶杓は六寸五分が標準です。

 茶筅は、節下が一寸〜一寸二分、節から穂先までが二寸六分〜八分で、全長四寸前後。 五分長の茶筅は文字どおり五分ほど長めです。

 柄杓は、合の直径が約二寸前後。風炉は比較的小いさめ、炉は大きめの合を使います。また、釜の口の大きさによっても合の大きさを使い分けます。柄の長さは、一尺一寸六分で真ん中に節があります。柄の端の削り方で 炉、風炉分かれますが、この区別をつけるのに、ある業躰先生に「みそぎぞ夏のしるしなりけり」と言う歌で覚えると良いと教えて頂きました。 つまり身の方を削ってあるのが風炉用、皮目を削ってある方が炉用ということです。

 茶巾の寸法は、約一尺×五分。材質は麻です。端の縫い方はお互い反対側になるように撚りつけて、五分間隔でかがるように縫ってあります

 帛紗は、一尺四方。(九寸四方の場合もある)これは利休の妻、宗恩の考案と伝えられています。それ以前は、五寸四方のものを使っていましたが、今はこれを古帛紗と呼んで使用しています。 現在の帛紗より以前に使っていたものである、という理由から古帛紗と呼ぶようになったといわれています。 また、今の帛紗より小さいので、小帛紗と言う意味で使う人もいます。

 竹の蓋置。 高さが一寸八分。 青竹の引き切りが約束。 炉の場合は、節を中程よりすこし上にし、風炉の場合は、節を上いっぱいに切ります。 向きは逆竹にします。 節の真ん中には空気抜きの穴を開けます。 熱くなった釜の蓋をのせ、あとでこれをとろうとしたとき、空気の通る穴がないと、熱で傍聴した空気が収縮して、蓋に蓋置がくっついてしまいますので、これを防ぐ為の大事な穴です。

 縁高は五寸四方に二寸五分の縁がついています。

なんの脈絡もなく書き連ねてきましたが、その他にもいろんな道具にそれぞれの寸法があります。 また、茶室の中にもいろんな寸法の決まりがありますが、それはそれで別項でまたお話ししたいと思います。 ひとまずここで寸法の話はおしまい。




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