無責任的野営論

VOL.6 遡行の話
源流への釣行は言ってみれば沢登りとほとんど同じだと言うのは皆さん異論のないところだと思います。 少なくとも源流へ釣行する場合、目的の釣り場までたどり着くための過程は、沢登りと同じです。

沢登りや源流釣行は道がないところを歩くという楽しみがあります。 しかし逆に、険しすぎて、へつったり泳いだり、時には高巻きをしたり懸垂降下を迫られたりという危険のともなう場面も少なくありません。
さて、沢登りと源流釣行は同じと書きましたが、厳密に言えばその目的が違います。沢登りは文字どおり沢を詰めて、最終的に山頂を目指します。 その過程で登山道ではなく沢を歩く事で山頂をあるいは尾根を極める目的で行われるものです。 これは日本独特の登山方法として今日へ発展してきました。

しかし、源流釣行では沢を歩くのが目的ではありません。 目的の釣り場に到達する為には、少しでも楽をできる所は楽をするべきです。 沢登りのようにストイックに(とまでは言いませんが)ルートを沢に限定しなくても、途中に登山道や杣道があればそれを利用した方が時間的・肉体的にはるかに楽です。
へたに泳ぎや懸垂などはやらないで済むならそれにこした事はありません。体力は釣りをするときまで温存しておきましょう。

とくにザイルワークはある程度の知識と経験が必要ですから、できるだけ使わないで済むようなルートファインディングをしたほうが賢い選択です。
アプザイレン(懸垂降下)をして沢に降りた場合、下に着いても安易にザイルを回収せず、その先が充分遡行可能であるかを確認してから次の行動へ移ることも重要なポイントです。
例えば、懸垂で沢へ降りて遡行を始めたら、すぐに先が通ラズになっていて、へつれない、しかもすぐ滝があり、泳ぐには水勢がありすぎ、滝は直登出来ない、巻くルートはかなりきつそう、という状況では、最悪の場合、結局は懸垂を始めた地点まで戻らなければならなくなります。

そんなとき、ザイルを回収した後では、再度ザイルを上まで上げなければなりません。 簡単なランニングビレイで済むくらいなら良いですが、もしかしたらナッツやハーケンを使ってビレイのためのポイントをとらないと登れないところだったら苦労します。
だいたい、そんなところは沢登りでもハードな装備の必要なグレードですから、単なる釣りへ行くだけの装備では手も足も出ません。

沢登りや源流釣行は、必ず危険が潜在している行動を伴うものです。 常に最悪の場合を考えて行動する必要があるのは言うまでもありません。 少なくともわたしはそうしています。 それはは臆病とは別の次元のものだと思っています。 何度も書きますが、常に最悪の場合を想定しているほうが行動に慎重さと緊張感が生まれて、結果的に安全に遡行することが出来ます。

地図の項にも書きましたが、現在地の把握は重要な作業です。 沢には明確なランドマークがあまりありません。 何度か通っている沢ならいざ知らず、はじめての沢では地図だけが頼りですが、その地図さえ当てにならないときがあります。 地図にない滝や沢の出現とかです。 そういったものは地形から的確に判断するしかありません。 沢なんていうのはそこでもだいたい石や岩と水と植物だけです。
そういった面から見ると、どの沢だってほとんど似たり寄ったりです。 はじめての沢を遡行する場合は、万が一、違う沢に入っても、その間違いにさえ気づかないかも知れません。しかし、それは危険なことです。 面倒でも常に現在地の把握に努めることが大切です。

沢登りをする人たちがよく使う遡行図(沢の概念図)を使うのも一つの手です。(右図は遡行図の例 参照)
地図に載っていない色んな情報が凝縮されています。 地形図と併せて使うと非常に役立ちます。


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